痛みの新説~筋膜痛との関連

コロナ禍になって

テレワークのせいかストレスのせいかわかりませんが

経験したことが無いほど多くの筋膜痛の患者さんがいらっしゃいます。

昨年、筋膜について話す機会をいただいて

数年前に書いたブログのアップロード忘れていたのを思い出したので

本日アップします。

以下は3年ほど前の内容を含みます。

***

ナショジオで痛みについて興味深い記事を読みました。

それは、皮膚に新たな痛みを感じる感覚器が発見された

という記事です。

「痛み」

幸福とは対極にあると思いますし

痛いとこあると楽しさがイマイチになりますね。

しかしそのシステムについては残念ながら不明な点が多い。

今回の発見はマウス実験で確認され

人間では未確認とのことですが

マウスに備わる感覚器はすべて人にも備わっていますので

新感覚器もおそらく人にも存在するだろう

ということです。

「侵害受容グリア・神経細胞複合体」

と名付けられました。

戒名みたいですね。

構造はシンプルで

グリア細胞(神経膠細胞)が

網状に並んでいるだけの器官。

(筋膜のセーター理論を想起しました)

グリア細胞はいくつか種類がありますが

職業的に関連するのはシュワン細胞と言うもので

末梢神経にバウムクーヘンみたいに巻き付いて

ミエリン鞘を構成します。

この細胞は神経を栄養したり

跳躍電動といって

神経に流れる電気の速度を早めたり

結構忙しい細胞です。

この新感覚器と僕の施術とのかかわりを考えると

「筋膜痛」というワードで繋がります。

「筋膜」?

患者さんはイメージしずらいようです。

ザックリ書くと

体の表面から深部に向かって

浅筋膜 → 深筋膜 → 筋外膜 → 筋周膜 → 筋内膜

の5層構造があり

深筋膜以下の筋膜は互いに連絡しています。

パッと手に触れてわかりやすいのは

筋外膜(筋上膜)です。

これは筋肉の形を表しているので

スポーツでセルフマッサージをされる方は

ピンとくると思います。

結果的にこの筋外膜を触れるまでに

浅筋膜・深筋膜を触れていることになりますし

筋膜の連結を通して筋内膜に影響が及びます。

院にはとても強い筋膜痛の方がいらっしゃいます。

骨・関節や靭帯に異常はなく

腫脹や発赤・熱感などの炎症所見もありません。

あるのはかなり強い「痛み」や「痺れ」です。

この手の痛みは見た目では全くわかりませんので

患者さんご本人の訴えで初めて知ることができます。

そしてこの筋膜痛と新しいグリア細胞の関連は興味深い。

「侵害受容グリア・神経細胞複合体」は

表皮と真皮の間に存在しますので

筋膜でいえば浅筋膜より表層です。

これまで

皮膚に触れただけで激しい痛みを訴える患者さんに

浅筋膜以下の筋膜痛を当てはめることに疑問を持っていましたし

筋膜痛の重要な特徴である「関連痛」を

これまで説明されてきた深筋膜以下の連絡によるものと同等に

合理的に説明できます。

現在筋膜治療を行うに際し

何故筋膜に偏りが生じるかという問題があります。

筋膜の偏りそのものは超音波画像で確認できますが

偏りのプロセスを正確にとらえることが難しい。

姿勢バランスなどが考えられるのですが

僕たちにできることは

勉強し経験を積み考える

というイマイチな方法です。

そこでこのバランスや筋肉・筋膜の連鎖

といった分野にも医療AIが及ぶことを望みます。

医療AIについては

厚生労働省「保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム」が工程表を出してます。

最も懸念されるリスクは、AIによるシステムエラー(間違い)だそうですが

現在も人為的ミスによる医療事故が後を絶たないわけですし

それほどネガティブな要素とは思えません。

経験の積み重ねは帰納法的で人間にとっては大切な手段ですが

より定量的な医療を同時に行うことができれば

さらにハッピー!

 

最後に

この筋膜の研究で笑えたのは

ドイツ人による

「腰背筋膜の中に筋肉と同じ分子がある」という研究。

昔の細菌学の研究もそうですが

細かいところに着目する国民性がイケてます。

カメラや車もイケてますし。

ギャハハ!